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隅田川往来
隅田川往来
とても子供の手習い本とは思えない風流な文章です。近郊の地名や名所の名前をを覚え、 併せてそこにまつわる故事伝承を知るようになっています。 江戸後期の観光ブームが影響したのかも知れません。
昨日は御庭の花
に戯れ流石に
なかき春の日を
たそかれはやきと
をしミ侍りき其
節御物かたり致候
隅田川の事旧
たるけしき一日
御同道申たく候
来十五日は梅若塚
念仏供養にて
御座候まゝ此日お
ほし召立候ハんや
右候はゝ竹馬の
友とち申合思ひ思ひ
の酒肴とりもたせ
名にしおふ両国
橋の辺より小舟
に棹さゝせ申へく候
もし風波あらく
候はゝ駒形堂に
暫く見合大船に
乗替順風に
真帆うちかけ勢い
櫓にはしり橋場
よりあかり爰にて
案内を頼名に
愛ていさ事とはむ
都鳥閑麗翁の
事なとくハしく
言傳たる一説も
これある事にや
相たつね木母寺
にて梅若塚の
縁起をも好覧し
すみた川のなかれ
清きをみては秋の
月隈なからん事を
おもひ浅葦か原
の松風を時雨とや
疑ハん彼妙亀
比丘尼朝暮閼伽
の水汲たまふと
うけ給り及し
鏡の池を見廻り
待乳山ゆふこえ
くれは唐崎の
大ミや人の讀置れ
たる旧誌浅草
観音堂花の雲
たな曳にけり
上野山根本中堂
金銀珠玉は霞の
中に輝き心なき
草木も枝を垂
葉をしき寔(まこと)に
賢き霊地にて
道より遥西に
なかめそれより
宮戸川邊の家居
しめやかに煙立
つくをうらやミ
苗代の川に啼
蛙の聲長閑に
聞へて面白なと
いふ計なく候ハんは
牛御前弘福寺
田中の稲荷にて
甕を被き酔
つかれ夜の雨と
誰人か詩作せられ
たる風景なと
感吟いたし石原の
尼寺太子堂臥
拝ミ猶日高くは
亀戸天満宮に
まふて吾妻の森
まゝの継はし是等ハ
重而にいたし
羅漢寺より永代
しま八幡宮を
はいし奉り汀に
うち出漂々たる
海邊安房上総
の遠に筑波山
女男の川の流は
何國の本かと
家路に赴かは
むかうに富士の
白峰鹿子斑の
餘情右に浅間の
嶽遠近(をちこち)人のミやは
とかめぬと在中将
むかし今見る様
にや侍らん遖(あっぱれ)此春
の眺望是に過
へからす御随心
にをいてハ本徳
たるへく候尤近日
月次参会之節
委細申談 く
と存候得とも
先達而如斯候
穴賢
林鐘
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