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常設の高札文



    新増女諸禮綾錦 巻之下

 高札は現代の掲示板といえます。条例、禁制などを庶民に周知徹底させるのが目的です。 古文書では御高札と必ず「御」をつけ(ごこうさつ)となります。 この図のように屋根や囲いが作られ、高札が立てられた場所を高札場といいます。 当時の名残で札ノ辻という地名が現代でも残っています。 図は『新増女諸禮綾錦(天保 年刊)』の挿絵より

原文



 正徳元年の「正徳の高札」は封建倫理の教諭、火事や強訴徒党などに対する取り締まりを示したもので五枚の高札 (それぞれ『忠孝』、『切支丹』、『火付』、『駄賃』、『毒薬』と呼ぶ)があります。 駄賃の金額はその時の相場で変わるが、そのほかの内容には変わりがなく、 幕末まで全国の高札場に掲示されていたということです。
 これは『忠孝』にあたる高札ですが、御高札寫大略(ごこうさつのうつしたいりゃく)とあるように 全文ではなく抜粋を版本『新増女諸禮綾錦』に木版印刷されたものです。 漢字にはすべてかなが振られて読みやすく当時の学習用なので、我々の古文書の学習用としても適しています。

解読文


  御高札寫大略
一親子兄弟夫婦をはじめ諸親類に
 親く下人等に至るまで是を憐むべし
 主人ある輩はおのおの其奉公に
 精をいだすべき事
一家業を専にし懈る事なく万事
 其分限に過べからざる事
一偽をなし又ハ無理をいひ惣て人の
 害に成べき事をすべからざる事
一博奕の類一切禁制の事

読み方について

 漢字にはかなが振ってあるので問題なく読めるのではないでしょうか。かなも濁点が使用されて読みやすくなっていますが、 古文書ではほとんどが濁点をつけません。濁点なしでも読めるためには文例を多く知ることが必要です。
 表題の読み「御高札の写し大略」に「の」があります。このように適時「の」などの助詞を補って読みやすくします。
 「一」で始まる文を「ひとつ書き」といい「ひとつ」と読みます。箇条書の条文のはじめに使います。
 はじめの条に「親」という字が、「おや」、「しん」、「したしい」という読みで出てきます。 それぞれくずし方が違うので較べて見てください。
 「事」という字も古文書に多く出てきます。「る」のようなくずし字もあります。また異体字「叓」も多く使われます。
 ここに出てくる変体かなの「へ」「す」「る」「に」などが読めるように辞書、参考書などを活用してください。

【元正間記】
 元禄までは「親子兄弟」の前に「忠孝を励み」の文言が加えられていましたが、元禄十五年の赤穂浪士に対する幕府の処分に 反発した民衆が日本橋をはじめ各地の制札の「忠孝を励み」の文言に墨や泥をかけるなどの行為が止まないので、 この文言を外したと元正間記に記されています。

参考

 全く同じ文章ですがこれは手書きされたものです。比較して見てください。 書く人により字の好みがあり、同じ文章でもさまざまな文字が使われているのが分かります。



 はじめと終わりに加わっている文は「天下一統之御高札(てんかいっとうのごこうさつ)」と 「猶此外略之(なおこのほかこれをりゃくす)」です。天下一統は全国一律の意味です。

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